現代日本を代表する芸術家たちとの協働によって制作された宮沢賢治童話シリーズ。絵本には原作と英訳を併記し、CDにはその朗読(日本語/英語)と音楽を収録。


絵本: 李 禹煥
音楽: 外山 雄三
語り : 越後谷栄二、Geoffrey Matthews
英訳: C. W. Nicol、谷川雁
初版: 1983年8月

[価格]
絵本・CDセット:
6,500円+税 (会員6,000円+税)
ISBN: 978-4-902486-00-1

絵本のみ: 2,500円+税
ISBN: 978-4-902486-01-8

CDのみ: 4,000円+税 (会員3,500円+税)
ISBN: 978-4-902486-02-5

 

賢治の生前に出版されたただ一つの童話集『注文の多い料理店』の巻頭におかれた作品。賢治自身が添えた広告文には「必ず比較をされなければならないいまの学童たちの内奥からの反響です」とあります。CDには日本語版(原作)と英語版を収録、越後谷氏は花巻市の近隣湯田町出身の声優、Matthews 氏は録音のためにロンドンからお招きしました。絵本は李禹煥氏による墨書ふうの抽象画でつくられています。

[本文より]
The writing was absolutely awful and the ink so grainy as to come off on Ichiro's fingers,
字はまるでへたで、墨もがさがさして指につくくらゐでした。

but even so, Ichiro could hardly contain his delight.
けれども一郎はうれしくてうれしくてたまりませんでした。

He slipped the postcard away in his school satchel and went hopping and skipping all over the house.
はがきをそつと学校のかばんにしまつて、うちぢゆうとんだりはねたりしました。

Even after he crawled in under the quilts that night
ね床にもぐつてからも、

he kept on imagining Wildcat's meowy grin, the scene at this supposedly bothersome trial and so on,
山猫のにやあとした顔や、そのめんだうだといふ裁判のけしきなどを考へて、

and didn't get to sleep until really late.
おそくまでねむりませんでした。

絵本: 高松 次郎
音楽: 間宮 芳生
語り : 岸田 今日子、Liane Aukin
英訳: C. W. Nicol、谷川雁
初版: 1983年10月

[価格]
絵本・CDセット:
6,500円+税 (会員6,000円+税)
ISBN: 978-4-902486-03-2

絵本のみ: 2,500円+税
ISBN: 978-4-902486-04-9

CDのみ: 4,000円+税 (会員3,500円+税)
ISBN: 978-4-902486-05-6

 

賢治童話のなかでももっとも人気の高い作品の一つ、しかし水仙月は何月と聞かれて即答できるひとは多くないでしょう。答えは四月、冬の間に焼かれた炭を父親といっしょにそりで町まで運んだ少年は、一足さきに帰る途中、春の雪嵐に巻きこまれてしまいます。おそいかかる吹雪のさまが比類なく美しいことばでつづられたこの物語は、賢治の天才をあますところなく示しています。

[本文より]
He dropped his gaze to the foot of the hill.
雪童子は眼を丘のふもとに落しました。

Along the narrow snowy trail that skirted the slopes the little boy in the red woolen blanket came hurrying as hard as he could for his mountain home.
その山裾の細い雪みちを、さつきの赤毛布(あかけっと)を着た子供が、一しんに山のうちの方へ急いでゐるのでした。

"Yesterday, he was helping to push the sledge of charcoal.
「あいつは昨日、木炭(すみ)のそりを押して行つた。

Now he's got some suger and is coming back alone."
砂糖を買つて、じぶんだけ帰つてきたな。」

With a chuckle, Snow Cherub tossed the branch of mistletoe he was holding at the boy.
雪童子はわらひながら、手にもつてゐたやどりぎの枝を、ぷいつとこどもになげつけました。

絵本: 金 昌烈
音楽: 間宮 芳生
語り : 坂本 和子、Faith Bach
英訳: C. W. Nicol、谷川雁
初版: 1984年7月

[価格]
絵本・CDセット:
6,500円+税 (会員6,000円+税)
ISBN: 978-4-902486-06-3

絵本のみ: 2,500円+税
ISBN: 978-4-902486-07-0

CDのみ: 4,000円+税 (会員3,500円+税)
ISBN: 978-4-902486-08-7


小さな谷川の底をうつした幻燈という設定は、草創期の新芸術、映画に寄せる賢治の関心の深さをうかがわせます。子どものカニの小さな目玉が水中カメラになって、ふりそそぐ光とゆらめく影、泡や魚、天井をすべる樺の花びらをうつしだします。音楽は制作当時来日中だったアフリカの打楽器奏者カクラバ・ロビ氏によるコギリ(シロフォンに似た楽器)の演奏をモチーフに、間宮芳生氏がアレンジしました。

[本文より]
Bubbles and little pieces of floating debris cast shadows that shafted through the water in angling lines.
泡や小さなごみからはまつすぐな影の棒が、斜めに水の中に並んで立ちました。

The fish returned to disarray and scatter those patterns of golden light,
魚がこんどはそこら中の黄金(きん)の光をまるつきりくちやくちやにして

transforming himself strangely with the color of iron, before heading upstream again.
おまけに自分は鉄いろに変に底びかりして、又上流(かみ)の方へのぼりました。

"Why does the fish go back and forth like that?"
『お魚はなぜあゝ行つたり来たりするの。』

asked the younger brother crab, moving his dazzled eyes.
弟の蟹がまぶしさうに眼を動かしながらたづねました。

"He's doing something bad. He's catching things."
『何か悪いことをしてるんだよとつてるんだよ。』

絵本: 菅 木志雄
音楽: 佐藤 允彦
語り : 城山 知馨夫、Ken Frankel
英訳: C. W. Nicol、谷川雁
初版: 1984年7月

[価格]
絵本・CDセット:
6,500円+税 (会員6,000円+税)
ISBN: 978-4-902486-09-4

絵本のみ: 2,500円+税
ISBN: 978-4-902486-10-0

CDのみ: 4,000円+税 (会員3,500円+税)
ISBN: 978-4-902486-11-7

聖なる白象とやり手の農場主オッベルの物語は、シャカ誕生の地に近いインドとネパールの国境あたりを舞台にしていると考えられます。ですから、語り手の牛飼いのかう牛もおそらくこぶ牛、しかしそんなふうに地籍さがしをつづければ、このお話がアジアや仏教におさまりきれない広さと多様さをもつことにすぐ気づくことになります。英語は牛飼いの語りにふさわしいように書かれ、また読まれています。

[本文より]
That fellow Obber is guite some guy.
オツベルときたら大したもんだ。

He's got six of them, rice threshers, all set up and going run-run-run-run-run-run! A terrible racket.
稲扱(いねこき)器械の六台も据(す)ゑつけて、のんのんのんのんのんのんと、大そろしない音をたててやつてゐる。

Sixteen farmers, right red in the face, are working those pedal machines,
十六人の百姓どもが、顔をまるつきりまつ赤にして足で踏んで器械をまわし、

making their way through a mountainous pile of rice sheaves, one bundle after another.
小山のやうに積まれた稲を片つぱしから扱(こ)いて行く。

Pedal-toss, pedal-toss, there goes the straw behind them, piling up again in a new mountain.
藁(わら)はどんどんうしろの方へ投げられて、また新らしい山になる。

 

絵本: 江口 週
音楽: 新実 徳英
語り : 鈴木 瑞穂、Gawn Grainger
英訳: C. W. Nicol、谷川雁
初版: 1985年7月

[価格]
絵本・CDセット:
6,500円+税 (会員6,000円+税)
ISBN: 978-4-902486-12-4

絵本のみ: 2,500円+税
ISBN: 978-4-902486-13-1

CDのみ: 4,000円+税 (会員3,500円+税)
ISBN: 978-4-902486-14-8

原野への入植は辛苦にみちたものですが、寒冷地ではなおのこときびしい。賢治がこの物語につけた広告文には「人と森との原始的な交渉で、自然の順違二面が農民に与へた永い間の印象です」とあります。順違とは、自然の恵みと過酷さといいかえることができるでしょうか。年ごとの収穫の祭りを幼年の眼がどのように見たか、過酷な暮らしの実相が甘美な記憶につつみこまれる賢治の傑作童話の一つです。

[本文より]
Now the four men, each facing in the direction of his choice, called out all together.
そこで四人(よつたり)の男たちは、てんでにすきな方へ向いて、声を揃へて叫びました。

"Can we hoe fields here?"
「こゝへ畑起してもいゝかあ。」

"Yes, you can!" answered the forests in unison.
「いゝぞお。」 森が一斉にこたへました。

The farmers shouted again.
みんなは又叫びました。

"Can we build houses here?"
「こゝに家建ててもいゝかあ。」

"Sure!" the forests straight away answered.
「ようし。」 森は一ぺんにこたへました。

 

絵本: 福岡 道雄
音楽: 新実 徳英
語り : 松村 建也、Gawn Grainger
英訳: C. W. Nicol、谷川雁
初版: 1985年7月

[価格]
絵本・CDセット:
6,500円+税 (会員6,000円+税)
ISBN: 978-4-902486-15-5

絵本のみ: 2,500円+税
ISBN: 978-4-902486-16-2

CDのみ: 4,000円+税 (会員3,500円+税)
ISBN: 978-4-902486-17-9

「うろこぐもと鉛色の月光、九月のイーハトヴの鉄道線路の内想です。」 賢治がこの物語にあたえた広告文はこのように短いものです。新文明・鉄道線路の内想とは不可解ですが、ここに登場する恭一少年がどうやら思春期の入口にあることを考えれば、内想は少年の内面でもあるらしいことがわかります。ドッテテではじまるでんしんばしらの行進曲は、賢治の残した譜面を尊重してアレンジされています。

[本文より]
A nine night moon was hanging up above.
九日の月がそらにかゝつてゐました。

Fish scale clouds filled the sky.
そしてうろこ雲が空いつぱいでした。

Moonlight had soaked right into their insides and the clouds seemed to wobble and weave as if drunk.
うろこぐもはみんな、もう月のひかりがはらわたの底までもしみとほつてよろよろするといふふうでした。

Once in a while, through gaps in those clouds, stars twinkled, winking icily.
その雲のすきまからときどき冷たい星がぴつかりぴつかり顔をだしました。

Striding briskly, Kyoichi came to where he could see the cheery distant lights of a station.
恭一はすたすたあるいて、もう向ふに停車場のあかりがきれいに見えるとこまできました。

絵本: 斎藤 義重
音楽: 佐藤 允彦
語り : 日下 武史、Geoffey Matthews
英訳: C. W. Nicol、谷川雁
初版: 1987年2月

[価格]
絵本・CDセット:
6,500円+税 (会員6,000円+税)
ISBN: 978-4-902486-18-6

絵本のみ: 2,500円+税
ISBN: 978-4-902486-19-3

CDのみ: 4,000円+税 (会員3,500円+税)
ISBN: 978-4-902486-20-9

お盆だというのに畑仕事をしている清作は、どこからともなく現れた画かきにつれられて、柏ばやしの夏のお祭りにまぎれこみます。ふたりを結びつけたものが歌なら、お祭りも歌合戦、その合間には柏の木大王と清作のあいだに険悪かつユーモラスな対話がかわされます。絵本は夏の高原で、女子高生たちの制作を斎藤義重氏が指導された、その成果をもとに構成されています。

[本文より]
Seisaku of course had nothing to say,
清作はもちろん弁解のことばなどはありませんでしたし、

and figured that with any more bother he'd pick a fight.
面倒臭くなつたら喧嘩(けんくわ)してやらうとおもつて、

He threw back his head, venting his throat full and wide to the sky.
いきなり空を向いて咽喉(のど)いつぱい、

"Crimson chapeau! Clang clangor bang with a clang!" he shouted.
「赤いしやつぽのカンカラカンのカアン。」とどなりました。

At this the tall painter let go of the scruff of Seisaku's neck
するとそのせ高の画かきは、にはかに清作の首すぢを放して、

and burst into hoots of laughter.
まるで咆(ほ)えるやうな声で笑ひだしました。

It resounded in the grove with a barking knock.
その音は林にこんこんひゞいたのです。

絵本: 高松 次郎
音楽: 間宮 芳生
語り : 佐藤 慶、Liane Aukin
英訳: C. W. Nicol、谷川雁
初版: 1987年2月

[価格]
絵本・CDセット:
6,500円+税 (会員6,000円+税)
ISBN: 978-4-902486-21-6

絵本のみ: 2,500円+税
ISBN: 978-4-902486-22-3

CDのみ: 4,000円+税 (会員3,500円+税)
ISBN:978-4-902486-23-0

足のけがを癒すために山の湯へむかった青年嘉十は、六ひきばかりの鹿の群に遭遇します。魅入られたようにその姿を見つめる嘉十の耳にやがて鹿たちの話すことばが聞こえてきます。鹿と人とのあいだに異種間交流はなりたつのでしょうか。太陽に向いてならび、それぞれ歌をうたった鹿たちは、求愛の季節のおとずれにしたがって、ちりぢりになっていきます。佐藤慶氏の方言による表現をお楽しみください。

[本文より]
Kaju suddenly had a keen ringing in his ears.
嘉十(かじふ)はにはかに耳がきいんと鳴りました。

He shook and trembled.
そしてがたがたふるへました。

Deer thoughts, like the waving of ripe grass in the wind, pulsated through him.

鹿どもの風にゆれる草穂(くさぼ)のやうな気もちが、波になつて伝はつて来たのでした。

Kaju indeed doubted his own ears, because he could actually hear what the deer were saying.
嘉十はほんたうにじぶんの耳を疑ひました。それは鹿のことばがきこえてきたからです。

"Oy, shall I go take a peep?"
「ぢや、おれ行つて見で来(こ)べが。」

"Nah, it be too risky, us'n better watch a bit more."
「うんにや、危ないじや、も少し見でべ。」



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